自学ノートに小説を書くな
「先生、どうして自学ノートに小説を書いてはいけないのですか?」
あれは中学一年生の春のこと。
「自分が勉強したいことを1日1ページ好きに書きなさい」と初めて渡された自学ノートに、私は数日間小説を書いて連絡帳で先生に注意された。
「小説じゃなくて、今日の授業の復習をしましょう」
なにも、学校の勉強をサボっているわけじゃなかった。
本当は1日1ページでいいけれど、小説+学校で習ったことの復習の2ページを毎日書いていたのだ。
「先生、私は国語の勉強として小説を書いています。
それに、よくこの小説を読んでみてください。
今日習った理科の授業について書いたものなので、ちゃんと復習になっているんです!」
そう。私が書いた小説は、所謂学習小説だった。
『動物探偵』というシリーズ物で、毎度動物がその日習った理科の内容を使って事件を起こすというものだった。
この小説を書いたおかげで授業の理解が深まったので、屁理屈などではなく単純に「何がいけなかったんだろう」と不思議だった。
先生の回答はこうだった。
「とにかく、普通の勉強をしてください」
私にとっての普通の勉強は異端である、と言われたようでショックだったのを覚えている。
私は根っからの文系で、理系の単元はこんな風に文章にしないと理解できないたちだった。
結局、先生と戦うかのようにめげずに小説を書いた私だったけれど、途中でやり合いに疲れて連載は終了した。
呆気ない終わり方だったと思う。
その後、私は自学ノートに注いでいた文章への情熱をブログへと移し替えた。
そして、結局私は普通の勉強をして理科が苦手な生徒に成り下がった。
理科の先生はとてもわかりやすい授業をしてくれたけれど、私にはサッパリだった。
相変わらず国語の成績だけは良かったし、それに飽き足らず弁論大会にまで出た。
あのとき、小説を書き続けていたらどうなっていたかなと時々考える。
学年が上がる毎に小説にするには難しい内容が増えていっただろうけど、私の性格上、何とか形にして三年間かけた超大作ができたに違いない。
多分、そのお陰で今よりは良い成績をとれてたんじゃないかな?
やってみたかったなあ~!!!
まあ今何を言っても、先生の要求に折れた私にはぎゃあぎゃあ言う資格がない。
だから、過去の私に言いに行きたい。
「大丈夫、私は間違ってないよ!三年間先生と戦っちゃおう!私と先生たちの1095日戦争だ!!」
そんなことをボヤきながら今日も私は小説を書く。
結局あの時できなかった抵抗が、逆に私に小説を書かせる力になっているのかも、しれない。