FICTION ?

大学生の日常と本のことが書かれた物語。

魔法使いみたいな親友だった

星や月が好きだ。

 

昔から、「子供ができたらなんて名前をつける?」と聞かれたら迷わず「美星!」なんて答えてた。

 

私が書く小説のキャラも星や月、空といった漢字を入れることが多い。

 

それはなんでだっけ、と思い返すと小学生時代の親友の顔が思い浮かぶ。

 

優ちゃん。彼女は星座に関する神話が大好きで、私はそんな優ちゃんの話を聞くのが好きだった。

 

夏休みは二人で夜、近所の公園に行き寝そべっては星の名前を教えてもらった。

 

元々優ちゃんは私が小4のときに転入した学校で登下校することになった友達というだけで、同じクラスになった試しはない。

 

だけど、優しくて凛とした人柄や、スポーツから勉強までなんでもできる優ちゃんが大好きだった。世界一素敵な女の子だと思うくらいに。

 

私が優ちゃんのことが大好きなことは周りも知っていたのだけど、ある日クラスの友達に言われた。

 

「でも優ちゃんって偽善者っぽいよね」

 

偽善者、という言葉は知っていた。誰かがなにか悪いことをしてチクった、偽善者だ、と実際に誰かが使っている場面も見たことはある。

 

納得がいかなかった。

 

とても兄弟思いで、両親が忙しいときは代わりに料理を作ってあげる。

 

近所の小さい子の面倒もみてあげる。

 

転入生の私にも優しく、学校のことを教えてくれる。

 

私が誰かに意地悪をされたら助けてくれる。

 

ほかにも沢山優ちゃんは良いことをしていたし、そんな彼女に恩を感じている人は私以外にもいた。

 

これが偽善というのなら、なにが善なのだろう。

 

優ちゃんは優しすぎるあまり、こんなふうに言われる場面が何度もあった。

 

その度に困った顔で笑う優ちゃんと、代わりに怒る私がいた。

 

今思えば、みんな嫉妬していたんじゃないかと思う。

 

なんでもできて、性格も良くて、みんなに愛されていて。

 

その上、誰かが突っかかっても言い返すこともない。そんな大人の対応が逆に嫌だったのかもしれない。

 

でも、中学生になると少しみんなも大人になったからなのか優ちゃんを悪く言う人は減った。

 

そして私は特に何も変わることなく、中学生になっても下校時間になると優ちゃんの教室の前で優ちゃんが出てくるまで待っていた。

 

優ちゃんは人気者だから、出てくるまで時間はかかるけどみんなに囲まれている優ちゃんを見ると嬉しくて待つ時間も楽しかった。

 

そんなとき、一人の男子が話しかけてきた。

 

「いつもいるけど、優さんとほんと仲が良いんだね」

 

人見知りの私はそんなふうに来られるといつも慌てふためいて上手く返事できないはずなのに、なぜか彼には自然と返せた。

 

『うん!優のこと大好き!だから出てくるまでずっと待ってる!』

 

そう答えると、彼は

 

「じゃあ優さんが出るまで話そ!」

 

と言って笑った。とても明るくて面白い子でいつも私を笑わせてくれた。

 

それからは何回か、優ちゃんが出てくるまでその人と話していた。それも楽しくて、優ちゃんやこの人といつか同じクラスになったら楽しいな、そんなことを思った。

 

だけど、ある日優ちゃんは転校することになった。

 

みんなは泣いていた。私は泣かなかった。

 

だけど、転校するのを告げられたあとから一緒に帰る度「もうすぐこれも終わっちゃうんだな」と悲しくて。

 

ただただ、優ちゃんと帰る毎日を大切に過ごした。

 

優ちゃんが転校したあと、私は案外平気で一人帰っていた。

 

ときどきツンちゃんという、アニメに出てきそうなレベルでツンデレな女友達と帰ることもあったけど毎日ではなかったと思う。

 

むしろ、一人で帰る時間は想像の世界に入り込めて楽しかったから一緒に帰ろうとする人たちから逃げ回っていたくらいだ。

 

でも、ときどきふと優ちゃんを思い出すことがあった。

 

猫を見つけると、優ちゃんは猫語で会話をしはじめて本当に猫も鳴きながら近づいてくること。

 

夕方にも月は見えるから探そう、といつも帰り道は月を探していたこと。

 

そして、優ちゃんのクラスの前で待つことが無くなった私は当然例の男子とはなすことはなくなった。

 

でもある日、3年になったときだろうか。彼と同じクラスになった。

 

優ちゃんと同じクラスに、という夢は叶わなかったけどなんだか優ちゃんのおかげで繋がることのできたその人と同じクラスになれたのはすごく嬉しかった。

 

だけど、現実は漫画のようにはならない。私とその子は結局会話すらせずに卒業した。

 

違うクラスだった時の方が喋ることが多いなんて不思議だけど、現実は小説より奇なり。こういうこともある。

 

彼が私と話したことをいちいち覚えているとは思えない。優ちゃんがいたほんの少しの期間だけ話しただけだから。

 

優ちゃんの友達とも何人かと仲良くなったこともあったけど、優ちゃんがいなくなったことで話すこともなくなった。

 

優ちゃんはシンデレラの魔法使いみたい。

 

たくさんのものを与えてくれるけど、時間が来ると魔法は解けてしまう。

 

でも、一つだけ解けなかったのは優ちゃんに教わった星への愛。

 

今はさすがにあまり覚えていないけど、夜空を見上げると「あんな神話があったなあ」なんてぼんやり思い出す。

 

未だに物語を書く時はやっぱり星や空に関係する名前を使う。

 

…こんなことを書いてたら、優ちゃんに会いたくなってきたな!

 

しばらく連絡はとってないけど、連絡先が変わってなければ話そうかな、と思います☺

 

今日も私の大切な思い出についてのお話でした!覚えているうちに書けてよかった!

 

また記憶を保管するために書きに来ます。お付き合い頂きありがとうございました!またね!