FICTION ?

大学生の日常と本のことが書かれた物語。

淡々文の記憶保管庫

突然小学生時代の記憶が頭の中に流れてきたので忘れないようここに保管しておく。

 

小学三年生のころだった。

 

当時、私によくちょっかいをかけてくる男の子がいて私はその子が苦手だった。仮名として、悠くんとあらわす。

 

だけど、ある日担任の先生から「悠くんは作文が苦手だから、書き方を教えてあげて欲しいの」と昼休みに頼まれたことがあった。

 

うへえ、と思いつつ作文は好きだったので教えることに。

 

さすがに昼休みまで残ってそんなことをやらされることに危機感を感じているのか、悠くんはいつものふざけ顔を封印して神妙な面持ちをしていた。

 

なんだかそれがおかしくて笑いつつ「どこら辺が分からないの?」と原稿用紙を覗く。

 

タイトルだけで真っ白なその紙に私は目をぱちくりさせた。

 

『…書き方からわかんねぇ、なんでみるくは上手く書けんの?』

 

「うーん…元々得意だからわかんないな…。とりあえず悠くんはこの作文で何が書きたいか教えて?」

 

そんな感じで、一つ一つ質問した。

 

「どうしてそれが書きたいの?」

 

「なんでそう思ったの?」

 

いつもは「スカートをめくらせろ」とか言って普通の会話をしてくれない彼が、ちゃんと返事をしてくれるのが嬉しくて私は一生懸命教えた。

 

なんだ、悠くんって普通に話したら楽しいんだ。

 

そう思ったのを覚えている。

 

結局その作文は昼休み中には終わらなかったけど、悠くんは「やり方わかったから家で終わらせる、ありがとう 」と言ってくれた。

 

作文の書き方なんて先生が教えた方が早いに決まってる。

 

だから、今思えば先生が仲の悪い私たちを見かねて和解の場を設けてくれたのかな、なんて考える。

 

結局、私はそのあと転校することが決まり彼とまた話すことなくその場を去った。

 

何度かバザーなどでその学校を訪れたことはあったけど彼に会ったことはない。

 

彼は苦手な作文を克服しただろうか。

 

願わくば、好きになってくれていたらいいな。